(北村)香住出身で、保育士になりたくて豊岡の短大に進学しました。ただ、高校から短大までずっと地元の民宿でアルバイトをしていて、そこで接客の楽しさを知り、地元のことを観光客の方に知ってもらいたいという思いも生まれてきて、旅館への就職を考えるようになりました。
城崎温泉にはあまり来たことがなくて、西村屋のこともなんとなく「大きな旅館」として名前を知っている程度でした。
(井上)大阪の短大に通っていた時代にカナダに短期留学したんですが、現地で急な大雪があったんですよ。その時のホテルの対応がちょっとひどくて…日本ではありえないようなものだったので、逆に日本の「おもてなし」というのはすごいんだなとあらためて感じて、それからホテル業界を志望するようになりました。
西村屋のことはもともと知らなかったんですけど、会社説明会で話を聞いて、とても興味を持ってこちらへの就職を決めました。
(谷口)高校は海洋科学科のシーフードコースで、姫路の調理師学校に進学しました。料理の道に進もうと思ったのは、親の作る料理がおいしかったからです(笑)
調理師学校で西村屋の方の話を聞いて、すごい旅館で勉強したら自分の料理の腕が上がるんじゃないかと思って、ここに来ることを決めました。
(北村)客室係としてお客様をおもてなしする仕事です。西村屋本館では、以前は一組のお客様には滞在中ずっと一人の客室係が、お出迎えから夕食、布団敷き、そして翌朝の朝食、お見送りまで担当していましたが、2022年の6月から、夜と朝のシフトが分かれ、朝食はお部屋ではなく朝食会場でとっていただく形に変わりました。この変更にあたって、私は朝食担当リーダーになりました。部屋で朝食をとっていただいていた時のように静かでゆったりと朝の時間を過ごしてもらえるように努めるのが、今の私の仕事です。
(井上)西村屋ホテル招月庭で、フロント係を担当しています。チェックインやチェックアウトだけでなく、お客様を部屋までご案内したり、宴会の準備や夜間の外線電話への対応など、フロントにはいろんな仕事があります。最近はネット予約とかクーポン割引とか、いろいろな予約形態のお客様がいらっしゃるので、間違いのないように慎重に準備しています。
入社4年目になって、任される仕事も増えてきました。売り上げをまとめる会計の仕事とか、後輩の指導とか、2022年の夏には顧客向けのDMパンフレットの作成にも関わらせてもらいました。デザインや写真撮影など、自分の意見が採用されたところもあって、楽しかったです。
(谷口)招月庭の調理場で、野菜や果物などの仕込みを担当しています。調理場には「板場」「煮方」などいくつかの持ち場があって、どこもそれぞれの難しさがあるんですが、特にハードだったのは魚をさばいたりお造りを作ったりする「板場」でしたね。切り方も盛付けも難しいし、特に冬場のカニの季節はひたすら朝から晩までカニを切る毎日です。仕上がりだけではなく早く作ることも大切なので、どういうやり方をしたら効率よくできるかも考えながら料理を作っていくのは、まだ慣れていなくて余裕がないころには本当に難しかったです。これまで持ち場を一通り担当してきて、ある程度のことは自分でできるようになり、少しは余裕が出てきました。
(北村)長く西村屋に来ていただいているお客様からは、朝食スタイルについていろいろなご意見をいただきます。私自身、最初から最後までおもてなしできる形ではなくなったのは少し寂しい気持ちもありますが、体力的にはずいぶん楽になったのも事実です。朝食会場を落ち着いていただける空間にするために、忙しい時でもバタバタした動きはしないとか、お話はできないけれどもお茶出しなどの心遣いでおもてなしの気持ちをお伝えするとか、一生懸命考えています。お客様に「このスタイルの朝ご飯もよかったよ」と言っていただけると、とても嬉しいです。
(井上)すっかり慣れました。寮にももちろんお風呂はあるんですが、たまに外湯にも入りに行っています。
入社した年の冬はほとんど雪が降らなくて、2年目の冬に雪が降った時は無邪気にはしゃいでいたんですが、3年目の冬は大雪で、ビックリしました。私自身も買い物に行くのが一苦労だったんですが、それ以上に宿泊のキャンセルが相次いだり、福知山までバスを出してお客様を迎えに行ったり、JRが止まって帰れなくなったお客様に対応したりと、とても仕事が大変でした。
最近はたまに京都の実家に帰ると親から「言葉が但馬訛りになった」と言われます。すっかり「城崎化」してきたなと、自分でも思います(笑)
(谷口)正直言うと、何度か辞めたいと思ったことはありました。勤務時間がかなり長くて、キツかったんです。そのたびに先輩たちから「もうちょっと頑張ってみろ」「お前が必要だ」と声をかけてもらって、なんとか辞めずにここまで来れました。入る前は上下関係がすごく厳しい世界かと思っていたんですけど、それはなかったです。厳しく叱られることもあるけど、分からないことは丁寧に教えてもらえるし、相談にも乗ってもらっていました。
最近「リーダー」という立場になりました。経験を積んで少しは気持ちの余裕も出てきたとはいえ、リーダーとして後輩たちを見ないといけないのはめちゃくちゃプレッシャーです。でもその分やり甲斐も感じています。今はシフトも早番と遅番に分かれて、労働時間の点でも改善されたので、辞めたいと思うことはもうないですね。
西村屋本館は2022年6月より、朝食のスタイルを「部屋食」から「ダイニングでの提供」へと大転換しましたが、その際に大きな役割を果たしてくれたのが北村さんでした。オペレーションの組み立てやサービス方法、社内各部署との連携等々を若手中心に討議する中でリーダーとして中心的役割を果たし10月には朝食サービスを一定の精度で確立してくれています。現在は朝食サービスの主軸で後輩社員、派遣社員、海外からの技能実習生も頼りにする、頼もしいリーダーです。
井上さんは度胸があって物怖じしない性格です。入社半年目くらいの時に地元のイベントの司会を頼んだ際、堂々とこなしていたのが印象的でした。それが仕事にも出ていて、特に3年目くらいからは仕事を覚えて、指示がなくても自分で仕事を作っていける、フロントスタッフの中でも非常に伸びている存在です。
谷口さんは器用なタイプではありませんが、我慢強い性格で、若手の料理人としてがんばっています。明るい人柄は申し分なくて、周りまで明るくしてくれています。今のまま努力を続けていってくれれば、西村屋の調理場を引っ張る存在に成長してくれると思います。
仕事の中身も経歴も三者三様ですが、お話を聞いていて共通して感じたのは「おもてなしの心」でした。「働き方改革」でその形は時代に応じて変わっていっても西村屋の「おもてなしの心」は変わらないのだと感じました。
江戸・安政年間の創業以来、1世紀を超える永きに亘って旅人をもてなしてきた西村屋。その価値は重厚で奥深い和の情緒溢れる『伝統』であり、常に次代への挑戦を怠らない『革新』の気風にあります。
西村屋本館は純和風建築で建てられた、歴史の風格と和の情緒を漂わせる木造旅館で、日本を代表する温泉旅館として知られています。また、1995年にグランドオープンした西村屋ホテル招月庭は、チャペルやプライベートスパなども備えた、「新しい時代の日本のホテル」です。
西村屋の活動のベースとなっているのが、社是「西村屋の心」です。
一つ目は「お客様を大切にし、お客様の満足を最上の喜びとすること」。
二つ目は「地域社会と取引先に信頼される企業であること」。
三つ目は「敬意と協調の心で、働きがいのある職場を作ること」。
西村屋は、160年の価値を世界へ伝え、次代へつなぐ人材を求めています。新たなる世代の人材が先人たちの積み重ねた伝統を学び、革新の精神を身にまとったとき、我々の価値は次の160年の扉を開くことでしょう。