但馬で働く人たちWORKER

製造業

中田工芸株式会社なかたこうげいかぶしきがいしゃ


先輩社員に聞いてみた

営業部 営業開発課
大田美祈子 (左)
(2017年入社=豊岡市出石町出身~愛媛大卒)
営業部
長島瑞季 (右)
(2018年入社=養父市八鹿町出身~関西外大卒)

大田さんの学生時代は?

(大田)出石の出身で、高校時代は茶道部に入っていました。当時の出石高校では文化系の部が一緒になって町内でアンテナショップを出したり、観光案内ボランティアの活動もしていたりで、かなり忙しかったです。
進学は、親から「西日本の国公立」と条件を付けられたので、「坂の上の雲」の秋山好古(元陸軍大将)が好きだったこともあって、愛媛大に進みました。大学ではドイツの文化や歴史を学ぶとともに、馬術部に入っていました。これも(「日本騎兵の父」と呼ばれている)秋山好古への憧れからです(笑)

長島さんの学生時代は?

(長島)出身は養父市の八鹿町です。中学の頃から海外の音楽やドラマに触れて、英語の勉強が面白いと思っていました。大学では、新しくできた英語国際学部という「英語圏と中国語圏への留学が必須」の学部に進み、カナダと中国・上海に留学しました。
留学中は、いろいろなことをプレゼンする機会が多かったんです。そんな中で故郷のことをプレゼンすることになっていろいろ調べているうちに、それまで知らなかった但馬の魅力に気付きました。

お二人の就職活動は?

(大田)最初は松山で就職しようかと思ったのですが、松山の企業って「地元出身者志向」が強いんですよ。それがわかったので、但馬での就職に方針を変えました。社会人1年目の一人暮らしに自信がなかったのと、電車での移動が嫌いなこともあって。
但馬でも海外と関わる仕事をしたいと思っていたので、城崎温泉の旅館なども考えていたのですが、この会社のことを知り、ニッチなものを取り扱っている世界的な企業というところに興味をひかれました。

(長島)大学に入った時から海外の人と関わる仕事をしてみたいと思っていました。最初に関心を持ったのは航空業界ですね。グランドスタッフとか…ただ、この会社のことを就職説明会で知って、「日本唯一の会社」が但馬にあったということに衝撃を受けました。それまでは「モノづくり」という業界には正直それほど興味を持っていなかったのですが、ここでハンガーだけじゃなくて作っている街のことも海外に紹介できるんじゃないかと考え、志望しました。

お二人のお仕事は?

(大田)二人とも営業部で海外チームに所属しています。私は営業開発課で、営業の後方支援というか、営業の方が交渉して契約をとってこられた商品をちゃんと作るためのサポートをします。例えば、輸出入関連の業務ですね。通関書類の作成とか、税関でのトラブルへの対応とか、輸入する材料などのコンテナのスケジュール管理とか。海外向けの仕事が急に増えるタイミングで入社したこともあって、輸出関係の事務作業に関しては主に私が担当しています。その翌年に長島さんが入ってきたので、チームの形になりました。

(長島)私もいろいろな業務を担当しています。今はイギリスの会社に代理店をお願いしているんですけど、そことのやりとりとか。あと、海外向けのSNS発信も一緒にやっています。
国内向けの仕事もしています。学校の卒業記念品やや企業の周年事業の記念品などにハンガーを使って下さるところも増えているのでそのための企画書を作ったり、実際にハンガーを手に取ってもらえる機会としてイベントでのポップアップ(期間限定ストア)の出店の企画をしたりしています。

企業とのコラボでは、高級イメージの企業さんが多いですね。JR西日本の「瑞風」とか、高級外国車とか…逆に、ファストファッションのメーカーさんが、通常の商品とイメージを違えるために高級な商品ラインに採用していただくケースもあります。

(大田)海外のユーザーさんから「ハンガーのロールスロイス」なんて言っていただいたこともあります。この但馬で、それに携わることができているということは、ちょっと誇らしい気持ちです。

海外相手の仕事だと、コロナの影響は大きかった?

(大田)まさかこんなに長期にわたって国をまたいでの行動ができなくなるなんて思っていませんでした。以前は海外での展示会にも行かせていただいていたんですが…ただ、だからこそネットを通じた情報発信は大切です。
私が入社したころは、海外からの問合せは年間に数件でした。それが今では毎週3~4件のお問合せを、インスタのDMやメールでいただいています。長島さんのあとも後輩が2人入って、今では海外チームは課長を含めて5人に増えたんですが、それでも手が足りないくらいです。

(長島)海外からのお問合せは、最初はインスタを見てというのが多いですね。高いものだと1本15万円というハンガーもありますし、ここまでハンガーにこだわっている会社は世界のどこにもないと思いますが、その良さを写真や動画でどう伝えるか、いろいろ試行錯誤しながらやっています。

2023年の1月には、イギリス・ロンドンにあって「高級紳士服店の聖地」とも呼ばれるサヴィル・ロウというところでイベントを行いました。私も久しぶりの海外出張としてイギリスに行ってきました。
たくさんのハンガーを壁に飾る「ウォール・アート」をおこない、初日のパーティーには100人ほどの方が来てくださりました。オーダーメイドの洋服の愛好家の方やインフルエンサーの方など、いろいろなつながりができました。3か月ほどの展示期間の間にたくさんの方に見てもらって、紳士服の本場でもNAKATA HANGERの認知が広がるきっかけになりそうです。

この会社に入ってよかったと感じることは?

(長島)海外からいただくメッセージって、時々とんでもない人からのものがあるんです。最近驚いたのは、「石油王のスーツを作っているテーラーさん」から特注をいただいたりとか…そういった、普通に生活していたら絶対に出会うことのない方とお仕事できるのはすごいことだなと思います。

(大田)仕事ももちろん楽しいんですが、会社としてSDGsやジェンダーギャップといった社会問題にも積極的に取り組んでいて、自治体のプロジェクトにも積極的に参加しています。私自身、豊岡市のジェンダーギャップ解消戦略会議の委員をさせていただいていますし、豊岡演劇祭にも役者として参加しました。まあ、演劇は個人的に参加したんですが(笑)…でも、プロの照明さんと一緒に仕事していろいろ教えていただいたことは、インスタの写真撮影にも役立ってるんですよ。

上司から一言

大田さんはマルチプレイヤーで、いろいろな仕事を高いレベルでこなしてくれています。英語を生かした仕事はもちろん、デザインのセンスもあってイベントのロゴを作ったりもしてくれています。何事にも前向きで取り組むという意欲が強く、とても頼りにしています。
長島さんは海外との窓口として実務をそつなくこなしてくれる、営業のエースと言える存在です。ロンドンでのイベントの際も、先方との実務的なやり取りは全部彼女が担当してイベントを成功に導いてくれました。
ここ数年で中田工芸が海外事業を大きく展開できたのは、会社としての思いを大田さんと長島さんが形にしてくれていったおかげだと感謝しています。

後輩たちへのメッセージ

(大田)今の若い人はデジタルネイティブ世代で、スマホさえあればどことでもつながれます。そのスキル自体は素晴らしいことなんですけど、そこで得られる「誰かが編集した情報」だけで満足してほしくないと思います。やはり、その場に行ってリアルに経験することに勝るものはないので、実際に飛び込んで行ってほしいですね。
(長島)但馬から一回出て外の人と話をする経験をすると、但馬のことをあらためて知って興味を持つきっかけになると思います。それで私は、但馬に居ながらにして毎日海外とやり取りする仕事に就くことができました。
特に海外に出ると、絶対に自分の故郷について聞かれます。その意味でも、英語を勉強すると世界が広がると思います。

取材を終えて

若いながら世界を相手に仕事をしているお二人。物怖じしない堂々とした話し方からは、自分の仕事と自社の製品に大きな自信を持っていることがうかがえました。


中田工芸株式会社

「日本のアパレル企業の発展を支える。」

中田工芸は創業以来70年以上にわたり木製ハンガーを製造している、国内唯一のハンガー専門メーカーです。これまでに蓄積したハンガーづくりのノウハウを随所に活かし、美しいデザインと機能性を備えた木製ハンガーを生産しています。
私たちはハンガーの可能性を追い求め、その魅力を世界に発信し続けると同時に、木製ハンガーを通じて心豊かな暮らしを提案していきます。
中田工芸は人と環境に配慮した木製ハンガーづくりと商品提供を通してSDGs(持続可能な開発目標)に取り組みます。ハンガーの材料には「森林資源の循環活用」の仕組みが確立されたブナ材を使用し、無駄なく有効活用することで環境負荷を抑えたものづくりに取り組んでいます。
また、働き方改革に取組み、異なるライフステージに立つ全員が働きがいを感じられるように、多様な働き方・生き方を認め合い社員の満足度と成長を支援していきます。さらに、よりよい社会を築くために社会課題の解決が不可欠とし、ジェンダーギャップの解消、女性活躍推進などの課題にグローバルな視点を持ち向き合っています。地域、自治体、行政と連携し社会の活性化に努め、よりよい社会と未来を共創していきます。